2024年4月11日にJRグループ各社や大手私鉄各社は、精神障害者に対する割引制度を導入・拡充することを発表しました。各社によって内容は一部異なります。まずはJRの割引内容を確認し、続いて各大手私鉄各社の割引内容とJRの割引内容との差異を見ていきます。
私鉄の並び順は、導入日順となっております。導入日の記述がない箇所は、2025年4月1日の導入です。また、導入日はダイヤ改正日とは連動していないことに留意ください。
同時に障害者用ICカードを第一種精神障害者とその介助者1名が利用できるようになります。障害者用ICカードに関する記述はここでは省略いたします。
また私鉄で101km以上のみ割引が適用されるが、その会社線のみでは100kmに到達しない場合があります。その場合は他社との連絡切符で適用される可能性がありますが、詳細は各鉄道会社にご確認ください。
- JR各社の割引内容 (2025年4月導入)
- 西日本鉄道 (2017年導入済み)
- 近畿日本鉄道 (2023年4月導入済み)
- 南海電鉄 (2023年10月導入済み)
- 東急電鉄 (2023年一部導入、2025年4月拡大)
- 京王電鉄 (2023年一部導入)
- 名古屋鉄道 (2024年4月導入済み)
- 京成電鉄 (2024年6月導入)
- 東京メトロ (2024年8月一部導入、2025年4月拡大)
- 阪急電鉄 (2025年1月導入)
- 阪神電鉄 (2025年1月導入)
- 西武鉄道 (2025年4月導入)
- 東武鉄道 (2025年4月導入)
- 小田急電鉄 (2025年4月導入)
- 京急電鉄 (2025年4月導入)
- 相模鉄道 (2025年4月導入)
- 京阪電車 (2025年4月導入)
- まとめ
JR各社の割引内容 (2025年4月導入)
JR各社(北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州)は共通した内容となっております。
以下はJRグループ(URLはJR東日本)のプレスリリースを引用したものとなります。
1.導入日
2025年4月1日
割引の乗車券類は 2025年4月1日から発売します。
2.対象者
各自治体で発行する精神障害者保健福祉手帳(旅客鉄道株式会社旅客運賃減額欄に第1
種または第2種の記載のあるもの ※)をお持ちのお客さま(以下、「手帳をお持ちの方」と
いいます。)
※今後、各自治体で精神障害者保健福祉手帳に旅客鉄道株式会社旅客運賃減額欄を設け、
第1種または第2種の別が表記される予定です。
3.精神障害者割引制度の概要
⑴ 介護者の方と一緒にご利用になる場合
①手帳をお持ちの方と介護者の方には、 同一区間の乗車券類をお買い求めいただきます。
②割引となる介護者の方は1名です。
対象者 対象となる乗車券類 割引率 第1種精神障害者の方と介護者の方 ・普通乗車券
・回数乗車券
・普通急行券
・定期乗車券
(小児定期乗車券を除きます。)5割 12歳未満の第2種精神障害者の方と
介護者の方・定期乗車券
(小児定期乗車券を除きます。)5割 ⑵ 手帳をお持ちの方がおひとりでご利用になる場合
片道の営業キロが 100キロを超える場合に限ります。https://www.jreast.co.jp/press/2024/20240411_ho04.pdf
対象者 対象となる乗車券類 割引率 ・第1種精神障害者の方
・第2種精神障害者の方・普通乗車券 5割
2024年4月11日JRグループ精神障害者割引制度の導入について
第一種と第二種の区分けがありますが、第1種は1級、第2種は2級・3級となる可能性が高いです。すでに導入済みの西鉄・南海・名鉄で1級は第1種と同等の割引が2級・3級は第2種と同等の割引が適用されているためです。
第1種と12歳未満の第2種で介助者と同伴する場合は、日常の利用でも割引が概ね適用されます。しかし、第1種で介助者が同伴しない場合や第2種の場合は、101キロ以上のため旅行などの遠出でないと適用されないケースがほとんどでしょう。
西日本鉄道 (2017年導入済み)
2017年より導入済みで、大手私鉄では最も早く割引に取り組んでいます。
割引内容は下記の点以外はJRと同等で、1級はJRの第1種、2級・3級はJRの第2種と同様の取り扱いとなります。
①単独乗車時の普通乗車券の距離制限がない
100km以下の乗車時でも割引が適用。
近畿日本鉄道 (2023年4月導入済み)
2023年4月より導入済みです。JRと基本的に割引内容に差異はありませんが、阪急などと同様に手帳の等級で割引内容が異なります。
1級はJRの第1種、2級・3級はJRの第2種と同様の取り扱いとなります。
https://www.kintetsu.co.jp/all_news/news_info/waribiki.pdf
南海電鉄 (2023年10月導入済み)
2023年10月より導入済みです。割引内容はJRと同等です。
また、1級はJRの第1種、2級・3級はJRの第2種と同様の取り扱いとなります。
https://www.nankai.co.jp/lib/company/news/pdf/230612.pdf
東急電鉄 (2023年一部導入、2025年4月拡大)
東急電鉄では2023年10月に2023年10月に1級の方が介護者と同行かつ普通乗車券の場合のみ割引を適用しています。2025年4月からはJRと同様の割引内容となります。
京王電鉄 (2023年一部導入)
京王電鉄では2023年10月に1級の方が介護者と同行かつ普通乗車券の場合のみ割引を適用しています。
4月11日のリリース時点では、割引の拡大内容は未定となっています。
https://www.keio.co.jp/news/update/announce/announce2024/20240411_oshirase.pdf
名古屋鉄道 (2024年4月導入済み)
2024年3月より導入済みです。割引内容はJRと同等です。
また、1級はJRの第1種、2級・3級はJRの第2種と同様の取り扱いとなります。
https://www.meitetsu.co.jp/profile/news/2023/__icsFiles/afieldfile/2023/09/01/23-09-01seishinsyougaiwari.pdf
京成電鉄 (2024年6月導入)
JRとの差は以下の通りです。
JRよりも単独乗車時でも割引を利用しやすく、関東では早い段階から割引が導入されます。
①導入日
普通乗車券(きっぷ)のみ2024年6月1日より先行導入。定期券やICカードなどは2025年4月1日から。
②対象の区分け
第1種と第2種で割引内容に差はない。第2種でも第1種に相当する割引内容となる。
③単独乗車時の普通乗車券の距離制限がない
100km以下の普通乗車券でも割引が適用される。
https://www.keisei.co.jp/cms/files/keisei/MASTER/0110/6gwHPqHv.pdf
東京メトロ (2024年8月一部導入、2025年4月拡大)
JRとの差は以下の通りです。介助がある場合のみ、早めに割引が導入されます。
①導入日
介助者が同行する場合の普通券のみ2024年8月1日より先行導入。その他の普通券、定期券やICカードなどは2025年4月1日から。
②2級・3級の乗車券の割引条件
小田急線に直通する「メトロはこね」を利用して紙のきっぷで以下の区間(101km以上)を乗車する場合のみ割引が適用される。ICカードでは割引適用不可。
・北綾瀬駅あるいは綾瀬駅から小田原駅まで
・北綾瀬駅から西日暮里駅までの各駅から箱根湯本駅まで
阪急電鉄 (2025年1月導入)
阪急では、2025年1月ごろから割引となります。阪急の場合は、障害者手帳の等級そのものにより割引内容が異なります。
1級はJRの第1種、2級・3級はJRの第2種と同様の取り扱いとなります。
第1種などではなく等級が基準であるのは、他の関西私鉄で共通となります。
①導入日
2025年1月末頃【予定】※導入日は後日公表。
https://www.hankyu-hanshin.co.jp/release/docs/3da9ec140e5188daf256ee2639a346639503d453.pdf
阪神電鉄 (2025年1月導入)
阪神でも、2025年1月ごろから割引となります。阪神の場合も、障害者手帳の等級そのものにより割引内容が異なります。1級はJRの第1種、2級・3級はJRの第2種と同様の取り扱いとなります。
①導入日
2025年1月末頃【予定】※導入日は後日公表。
https://www.hanshin.co.jp/press/docs/20240411-toshikoutsu-seisinnsyougaisya.pdf
西武鉄道 (2025年4月導入)
西武は普通切符での距離制限だけがJRと異なります。西武では50kmを超える場合であるため、都内から秩父に向かう際にも利用できます。
①単独利用の普通切符での割引が51kmから適用
西武線内で遠距離を利用する場合は適用される
東武鉄道 (2025年4月導入)
ICカードでは東武線内の運賃のみ割引が適用される以外は、JRと差異はありません。
https://www.tobu.co.jp/cms-pdf/news/20240409122014cKFJ6NNNhFrVDnYbTAwtYA.pdf
小田急電鉄 (2025年4月導入)
JRと同様の割引内容です。
https://www.odakyu.jp/news/b4fuqs0000001p7h-att/b4fuqs0000001p7o.pdf
京急電鉄 (2025年4月導入)
JRと異なり、距離にかかわらず単独乗車時の普通乗車券の割引はありません。
相模鉄道 (2025年4月導入)
JRと異なり、距離にかかわらず単独乗車時の普通乗車券の割引はありません。
京阪電車 (2025年4月導入)
JRと基本的に割引内容に差異はありませんが、阪急などと同様に手帳の等級で割引内容が異なります。
1級はJRの第1種、2級・3級はJRの第2種と同様の取り扱いとなります。
https://www.keihan.co.jp/corporate/release/upload/240411_keihan-railway.pdf
まとめ
鉄道会社により一部取り扱いが異なります。特に単独乗車時の普通乗車券の割引は会社によって異なります。
「〇〇では割引されたのに、割引が適用されない△△は悪い」と強く批判してはいけないですし、ましてやカスタマーハラスメントに類する行為はしてはいけません。法律に則った割引制度ではなく、各社が福祉的な視点に立って自ら行なっている割引であることを忘れてはいけません。
また、障害者手帳への割引種別の付記は、実際どのように進めるのかは不透明です。割引を受けるためには割引種別を付記する必要があるかを含めて、今後注視したいと思います。