iDeCoを利用することにより、老後の資金を蓄えることができます。また、NISAも同じように資金を有効に蓄えるための手段の一つです。どのように使い分ければ良いか考えます。
iDeCoとはなにか?
毎月一定額を積み立てていき、積み立てているものを資産運用します。資産運用したお金は60歳以降に受け取ることができます。
iDeCoの主なメリットは、以下の3点です。
- 積立をする際に、毎年の所得(収入)に対する所得税や住民税が安くなる
- 運用利益は非課税となる
- 60歳まで原則引き出しが出来ないこと(デメリットにもなりますが、後述の理由でメリットとも言えます)
積み立てる際の金額により所得税や住民税が節税できます。例えば月1万円を積み立てると、年収300万円程度の人の場合だと所得税で約6000円、住民税で約12,000円程度を節税できます。
また、運用利益は通常20.42%が源泉徴収されるところ、非課税となります。例えば、毎月1万円を30年積み立てて年2%の運用益を想定します。この場合、30年で126万円ほどの利益が出ます。本来であれば26万円ほど課税されるところ、火課税となります。
60歳まで原則として引き出すことが出来ない点は、老後資金を確実に確保するという点ではメリットとなります。老後資金に固定化されるゆえに、障害や死亡に対する備え以外(例えば教育資金)に対応することは出来ません。
NISAとの違い
NISAとiDeCoを比較すると以下の違いがあります。
- NISAは好きなタイミングで引き出し可能、iDeCoは60歳まで引き出し不可
- NISAは積立時の金額に対して所得税を節税出来ない、iDeCoは節税効果がある
- NISAは年間360万円まで積み立て可能、iDeCoは最大でも年間81.6万円までである。
よって、老後資金以外に使う可能性がある場合や、iDeCoの積立額では老後資金を含めて積み立てが不足する場合に有用であると言えます。
またiDeCoとNISAは両方を活用できるので、iDeCoで足りない部分をNISAで補うことも可能です。
iDeCoが使えない、使いづらいケース
iDeCoがそもそも使えなかったり、使えたとしてもiDeCoのメリットを享受しづらいケースがあります。
iDeCoが使えないのは、国民年金保険料の免除を受けている場合や、そもそも国民年金に加入していない場合です。言い換えると、勤務していて厚生年金に加入していない場合で国民年金を全額(約1.7万円)を支払っていない人は、iDeCoを利用できないということです。
障害年金を受け取っている人は法定免除となります。また生涯にわたって障害基礎年金を受け取る場合には、65歳以降も老齢基礎年金の満額と同額を受給できます。よって、生涯にわたって障害基礎年金を受け取る見込みである場合には、iDeCoを使わずNISAで免除された保険料を含めて積み立てて運用できます。
給与や年金を受け取ることにより、所得税が控除されていないケースは、iDeCoのメリットの一部を享受できません。例えば、障害年金のみを受け取っている人や給与収入が103万円以下の人は所得税は年金にはかからないため、収入からの所得税を軽減する効果はありません。ただし、運用による利益や受取年金に対する所得税の優遇措置は、ほかの方と変わりません。
NISAでも運用利益の非課税は享受でき、年金ではないため受け取る際の課税はありません。任意のタイミングで引き出しができないメリットを考えると、この場合もiDeCoよりもNISAの方がメリットがあると言えます。
意外とiDeCoが使えるケース
一見デメリットと思われる60歳以上にならないと引き出しができないケースですが、例外的なパターンや引き出しが基本的にできない点を逆手にとってメリットとすることにより、iDeCoを有効に利用できるケースがあります。
60歳以上にならないと基本的に引き出せませんが、概ね障害年金を受け取れる程度の障害となった場合、死亡した場合には例外的に引き出すことができます。
積み立てたことで将来の障害や死亡した際の備えが全く出来ないという点は誤りです。ただし、積み立て始めてから時間が経過していない場合は、十分な資金を確保できていないこと、元本割れしている可能性があることは注意してください。
また障害年金を受け取っていたとしても、国民年金保険料の免除を受けていない場合や就労していて厚生年金に加入している場合には、iDeCoに加入することができます。
就労により103万円以上の給与があり所得税が徴収されている場合には、年末調整や確定申告により所得税が還付されます。
また、iDeCoは原則として解約して引き出すことができないという点はデメリットとなりますが、同時にメリットとなり得る場合があります。生活が困窮した場合でも解約することができません。
しかし、生活保護を受けることとなった場合に新たな積み立てはできませんが、年金を受け取れる状態(60歳以上、障害)や例外的な場合を除いて、年金を受け取ったり解約する必要はありません。
このことにより原則的に貯蓄ができない生活保護を受けることとなったとしても、老後に向けた資金を保護することができます。生活保護が解除になった後に老後に向けた資金がない状態になる事を、回避することができます。
まとめ
iDeCoは給与収入が103万円以上ある方には、メリットがあります。これは障害年金を受給している方でもiDeCoには加入可能であるため、収入のある方は検討の余地があります。
障害年金を受給している方で収入が少ない方は、メリットが十分に享受できなかったり、そもそも加入することが出来ない場合があります。このような方は、NISAの活用を検討してください。
また、老後資金をどのような状況でも保護し障害や死亡のときは引き出すことが出来ます。
そのため、障害や死亡に対する備えがiDeCoの積立により手薄になる心配はそれほどしなくて良いです。また生活に困窮した場合でも、確実に老後資金を保護することができます。