傷病手当金と障害厚生年金

傷病手当金は、健康保険に加入している労働者が傷病で就労出来ない場合にもらえる手当金です。障害厚生年金は、初めて病院に行ったときに就労していて厚生年金に加入していた人が、障害が残った場合にもらえる年金です。この2つは、どのような関係になっているのでしょうか。

傷病手当金とは

傷病手当金は以下の条件で受給することが出来ます。

  1. 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  2. 仕事に就くことができないこと
  3. 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  4. 休業した期間について給与の支払いがないこと
全国健康保険協会

通算で1年6ヶ月分まで支給されます。例えば、最初2ヶ月は給与支給されている場合は、その2ヶ月が過ぎて更に1年6ヶ月後まで受給されます。

障害厚生年金とは

障害厚生年金は以下の条件で受給することが出来ます。

  1. 厚生年金保険の被保険者である間に、障害の原因となった病気やけがの初診日があること。
  2. 障害の状態が、障害認定日に、障害等級表に定める1級から3級のいずれかに該当していること。ただし、障害認定日に障害の状態が軽くても、その後重くなったときは、障害厚生年金を受け取ることができる場合があります。
  3. 初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。
    ただし、初診日が令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
日本年金機構

障害認定日とは、基本的に初診日から1年6ヶ月となります。就業できない期間に会社から給与が全くなかった場合は、障害認定日と同時に傷病手当金は支給終了となります。

傷病が長引いたら傷病手当金から障害厚生年金に

上記の通り、傷病手当金は1年6ヶ月までの支給、障害厚生年金は初診日から1年6ヶ月経過した後に請求することが出来ます。よって、傷病が長期化して障害の状態となった場合に傷病手当金から障害厚生年金に切り替わるイメージです。すなわち、同じ病気や障害で傷病手当金と障害厚生年金を同時に受給することができません
ただし、傷病手当金と障害厚生年金の両方を受け取ることが出来ない場合は、どちらか高い方の金額を受け取ることが出来ます。2の障害年金の方が優先的に支給され、差額分だけ傷病手当金として受給出来ます。これは併給調整と言います。

  1. 傷病手当金の1日分
  2. 障害基礎年金額と障害厚生年金額の合計額の360分の1

例えば、うつ病で障害厚生年金を受給している人がうつ病が悪化し仕事をやすくことになった場合が該当します。障害厚生年金の障害に関連している病気の場合も併給調整の対象となります。例えば、発達障害で障害厚生年金をもらっている人が、二次障害として適応障害になった場合は併給調整される可能性があります。

傷病手当金と障害年金の双方を受け取ることができるケース

傷病手当金の受給理由となる病気と障害厚生年金の受給理由となる障害が同一傷病でなければ受給することができます。

発達障害で障害厚生年金を受給している場合に、発達障害に起因しない病気や怪我(例:インフルエンザ、がん、手足の骨折など)により仕事につくことができない場合は、傷病手当金も障害年金も両方受け取ることが出来ます。
傷病手当金申請書に障害厚生年金の受給有無を記述する欄がありますが、この場合は「受給していない」と回答します。

また障害基礎年金だけを受給している人は、同一傷病であっても傷病手当金との併給調整はしません。これは障害基礎年金は傷病手当金を補完する関係となるものではないためです。

まとめ

傷病手当金と障害厚生年金は、排他関係に近いものがあります。よって、同じ病気で双方を満額受給することはできません。ただし、障害基礎年金のみ受給している場合や違う病気である場合は、双方を満額受給することができます。

障害年金と給与で生計を立てている人は、持病や障害が悪化し就業できない場合には収入減の幅が通常よりも大きくなります。そのため、貯蓄などで障害の悪化に対するリスクを軽減させる必要があります。

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